小田さくら普及委員会的観劇レポ
劇場内の音響では、幕があがる前からしとしとと雨が振り続けている。ややあって遠雷、どこかから少女たちのざわめきも聞こえるようだ。
突然すべての照明が落ち、劇場全体が闇に包まれると、舞台中央には「本作品を象徴するような演出」で、白光の中に少女がひとり現れる。裾を引きずらんばかりの長い丈のフリルスカートに、大きなフレア袖の出で立ち。少女は、この世のものならぬ風情で身を起こし、ゆらりと立ち上がる。小田さくら演じる「シルベチカ」だ。
やがて流れ始めたピアノに乗せて彼女がゆっくりと歌い始めると、会場の空気が一変した。
満場の観衆が、一斉に息を呑む。誰もが金縛りにあったかのように舞台上の一点を見つめ、身動ぎすることもできない。物語の始まりを告げる曲『Forget me not』。この舞台は、新人ながら類まれなる歌唱力をもつ小田さくらの独唱で幕を開ける。
切々と歌い上げるシルベチカの歌声は雨となり、客席を濡らしていく。やがて嵐のようなサビへと至るクレッシェンドが劇場中を支配し、全員が参加する歌が終わるとともに、物語の始まりが告げられる。気づくと、鳥肌が立っていた。
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完璧なオープニング演出
演劇の開演直後というのは、どうしてもそれまでの客席のざわついた雰囲気が残っているものだ。だからこそ、演出家はオープニングの演出に知恵を絞るわけだが、この『LILIUM』という舞台において、凄絶な物語の始まりを飾るにこれほどふさわしい演出はないのではないか。
演出家の末満健一氏が、パンフレットでこのオープニングについて語っている。
「『LILIUM-リリウム-』は彼女がメインの楽曲で開幕します。彼女のボーカルの力を何も飾らずにお客様に受け止めてもらいたいと、あえて振り付けもなく、ほぼ棒立ちの状態で歌う演出にしました。素晴らしいオープニングになったと自負しておりますが、これも小田さくらというボーカリストの力があってこそできることです。」
確かに、観客を一瞬にして物語の世界に引き込み、見るもの全てを納得させる説得力が、この舞台の小田さくらの歌唱には存在した。
しかも、小田さくら演じるシルベチカは、オープニングの歌を歌ってすぐに姿を消すのだ。残された鞘師演じるリリーが、記憶を頼りに彼女を探し続ける…。
冒頭で圧倒的な存在感を示した少女が、しかし不在のまま物語が進むことによって、観客の心の中にシルベチカという少女の存在がじわり、じわりと広がっていく。それがまるで雨に濡れた外套のように重くまとわりついた頃に、雷鳴の中でシルベチカ不在の理由とクランの謎が明らかになるのだ。
小田さくら ―シルベチカ― の存在は、リリーとスノウという2人の主役に比べれば出番は少ないが、オープニングと回想シーンの出演で、観客の心に決して「忘れられない」鮮烈な印象を残した。
小田さくらの天賦の才が開花する
末満氏は、小田さくらをこう評している。
「今回はじめてご一緒させていただきますが、初舞台なのに演技も抜群にうまい。時々いるんです。経験もなく訓練も受けていないのに自然と演技の出来てしまう人が。『歌うことが大好き』とのことですが、舞台演出家としてはこれからもっと演技の方にも興味を持ってもらえると嬉しいですね。」
ここまでくるともう嘆息するほかない。小田さくらは、ミューズに愛された天賦の才だ。
見るものを惹きつけずにいられない存在感と演技力、繊細さと力強さを併せ持った歌声、透き通る声質は、持たざる者が訓練して到達できる地点とは最初から別の地平にある。
彼女は単に「アイドルとしては歌が上手い」というだけの存在ではなくて、ボーカリスト、表現者として超一級の素質を持っている(しかもそれはまだ開発途上の状態で!)ということが実感できる舞台だった。彼女の今後の活躍から、ますます目が離せない。
私を忘れないで…
しかし今は将来のことよりも、雨の降るサナトリウムの世界をまだ忘れられないでいるのだった。私の心の中には今も雨が降り続いている。どうやら完全にシルベチカに「イニシアチブ」を掌握されてしまったようだ。
今や私の願いはただひとつ。お願いだからアンコール公演してください…。
I really can’t wait for the DVD.
i am also wondering when the DVD will be released.
共演者の方々のブログなどを見ると、さくらちゃんに関しては歌の安定性を
みんな褒めてますが、でもさくらちゃんの(歌唱の)すごいところは、管理人
さんがお書きになっているように、「観客を一瞬にして物語の世界に引き込
み、見るもの全てを納得させる説得力」なんです。初舞台にしてこれが出来
てしまうところが天賦の才と言われる所以です。
まさにそうですね。
彼女の歌声ってなんか電磁場みたいに感じます。
たとえ技術や歌詞への理解、感情表現等に稚拙な部分があったとしても、彼女の歌声そのものがその届く範囲に閉じた独自世界を創ることができる。
現状では決してパワーボーカルではないのに……音圧ではなく響きで創ることができる、その特徴はオーディションの時から変わっていないと思います。
娘。オーデの最終歌審査の「Be Alive」はまさにそうでしたね。ピッチや
リズムが完璧なわけじゃない。でも聴く者の心を捉えて放さない。自分は
この歌を聴いて、ハローと娘。に引き戻されました。
さくらちゃんの独自世界を本格的なミュージカルでもみたいなあと思ってしまいました。
大げさなアクションとか大きな声を張り上げるんじゃなく、繊細なパフォーマンスで独自世界を生みだせる彼女なら近い将来きっとそういう機会もあるはずです。
私はシルベチカが自ら有限の命を選んで自殺するシーンが実に小田ちゃんらしいなあと思いながら見ていました。
というのも、管理人さんも取り上げていた、auスペシャルムービーでの”「自分の力で生きていく」人間になりたい”という発言が印象に残っていたからです。
語り部でありながら主ファルスへの異議申し立てを行うという複雑な役割も、出番は少ないながら適任だったと思います。
”「自分の力で生きていく」人間になりたい”というコメントは演出家の方はしらないかもしれませんが、知らなくても小田ちゃんの独自に道に進む雰囲気は十分感じられるでしょうから当然のキャスティングかもしれません。
サウンドトラックもヤバイですね…
CDを聴くだけで鳥肌が立ちました。
現場だったら私反応できないかもしれないんです…
小田ちゃんの声やっぱりすごいんですよ
確かに音だけでも十分迫力は伝わりますね。
きめた。dvdかうぞーーー!
Really want to hear it myself. I will buy the DVD.
舞台ももちろん素晴らしかったんですが
管理人さんのこのレポも凄い…と思いました
小田ちゃんの歌を思い出してぞくぞくしてしまいました
リリウム、21日朝公演、家族で観劇してきました。
みなさん迫力ありましたね。
優れた人材を青田刈りされてしまうという某有名歌劇団の元支配人の嘆き節がよく分かります。
お隣の非ハロオタの舞台ファンの方もめいめいとさくらちゃんにはビックリしてました。
さくらちゃんが評判通りのパフォーマンスでしたが、私的には少女Aのときのちょっとしたポーズがイチイチ可愛くて参りました。
さくらちゃんの現在の体調を考えるとミュージカル定番の絶叫シーンが割り当てられなかったのは良かったと思います。
アフタートークショーでも、中西さんとさくらちゃんが絶好調でした。
「末満さんが“中西めっちゃ動いてるでぇ!”」と言ってましたとトークするさくらちゃんの言い方やタイミングが芸人に近いそれで、思わず笑っちゃいました。
中西さんも大阪人なのでノリの良いトークになっていたと思います。
そう言えば、最近ブログでもときどき関西言葉を使ってますね、中西さんの影響かな??
サントラに含まれない曲もありますし、さくらちゃんメインの3曲以外にも結構歌割ありましたね。
本当にブルーレイが待ち遠しいです。
私はこういう輪廻的ストーリーは好きな方なので結構楽しめました。
すでに続編の構想(リリウム2?)もあるそうなので、次はただ一人生き残ったリリーから始まる話でしょうか……庭師がいるなら雇い主もいるはずですし……
DVD化の際にはアフタートークショーを特典映像として
付けて欲しい。その21日朝公演のやつは是非とも見てみたい。
思い出しました。スッピン歌姫オーディションの最終歌審査の後の
本人への合格発表後のインタビューでつんく♂さんがさくらちゃんを評して
「女チャップリン」と言っていたのでした。
>誰もが金縛りにあったかのように舞台上の一点を見つめ、身動ぎすることもできない。
さすがにこれは言い過ぎで逆効果。
でもそこそこいい舞台だったよね!
末満さんが深夜のustで
オープニングでさくらちゃんが起き上がるのは
「崖から飛び降りて魂だけが浮上し歌い出す」シーンなのだと言っていました。
さくらちゃんの青エクブログの最後に
「自分もこういう感動を与えられるお芝居が出来るように
頑張りたいと思います!!!!」とありますし
演技にも興味を持って貰いたいという末満さんの思惑にしっかり応えてくれているようです。
歌は勿論ですが、さくらちゃんの次回作も期待しちゃいますね。
それでああやって起き上がるんですね!こういう情報を知ると本当にもう一度見たくなります。
秋のDVDが待ち遠しすぎますね!
DVD届いた!
私のところにも届きました。オペラグラスで見る光景とは違うので、これはこれでいいですね。
Amazonは売り切れみたいですね。
本編はもちろんですが、副音声でもかなり楽しめますね。ネタバレのオンパレードなので本編を見たあとにすべきですが、はじめて聞くお話が盛りだくさんでした。特典映像も末満さんご自身が撮影されたようで、なかなか見応えがありました。そして自分の期待以上だったのがサウンドトラックアルバム。レコーディングの前日に曲を貰ったと譜久村さんが言っていたので、正直あまり期待していなかったのですが、これがなかなかな出来映えで、劇中での歌唱とはまた違ったよさがありました。